喜多方の蔵

喜多方に蔵が多い理由

「みちのくの蔵のまち」としてその名を知られる喜多方。表通りはいうまでもなく、路地裏にも立ち並ぶ蔵屋敷は、各地から訪れる多くの人々の目をみはらせる。 喜多方市内にある蔵の数は、おおよそに四千棟以上といわれる。このような多くの蔵が、造られたきっかけのひとつは、明治十三年に起きた大火だった。現在の喜多方市の中心部(当時は小荒井村)の表通りにある一軒の店から出た火は、瞬く間に燃えひろがり、約三百棟が灰と帰した。失意に沈む村人たちの目に映ったのは、一面の焼け野原の中に、くすぶりながらも残った蔵の姿であった。そのためにか、普通は、倉庫として用いられる蔵だが、喜多方では、住居(蔵座敷)、店舗(店蔵)、工場、醸造場、寺院など、その形態は、人々の暮らしと深く結びついている。さらに喜多方では、良質の水と米に恵まれた土地ならではの醸造業を営む場として蔵が最適な建物であったこと、「男40にして蔵の一つも建てられないようでは男ではない」という風潮があるのも理由の一つ。

喜多方の蔵の特徴

  1. 周辺の集落にも蔵が多い
    市街地から離れた農村集落にも煉瓦蔵など個性的な蔵が多数存在し、ユニークな景観を形作っている。
  2. 用途が幅広い
    倉庫だけでなく、店舗(店蔵)、住まい(蔵座敷)、漆器職人の作業場(塗り蔵)、酒・味噌・醤油の貯蔵庫(酒蔵・味噌蔵・醤油蔵)、屋敷の塀(塀蔵)、トイレ(厠蔵)など様々な使い方がある。
  3. 建築様式・材料が様々
    蔵の一般的な壁材料である白漆喰の他に、黒漆喰、レンガ、土壁などがある。特に、特別な建物に使われることの多いレンガが一般的な農家の建物に普及しているのは珍しい。
  4. 現在も生活の中で使われている
    まちのあちこちで見かける蔵は現在も大半が使われ続けており、喜多方の生活文化の中にしっかりと息づいている。
参考文献: 喜多方観光物産協会

こて絵の蔵

喜多方の蔵にはよく見るとこて絵のあるものが見受けられる。 こて絵とはこてを使い漆喰で浮き彫りのように蔵に描かれた絵のことである。こて絵からは、よりよい生活を願う当時の人々の生活感がうかがわれ大変興味深いものである。現在は住居などに使用されているため一般的な開放はされていない。こて絵はぼたんの花や松の木、鶴、亀、鷹等々が描かれている。

喜多方の代表的な蔵

安勝寺

鬱蒼とした木立に囲まれた本堂が、土蔵造りという喜多方ならではの珍しい寺。明治13年(1880)の大火により旧本堂は焼失したのを、明治29年火災に強い土蔵造りの現在の本堂が建てられた。重厚感のある黒い瓦と白漆喰の壁の対比が美しい独特の風情を漂わせている。屋根の下に見られる獅子の彫刻も見事である。

住所:〒966-0861 福島県喜多方市字寺町4706
交通・アクセス:喜多方駅より車で3分徒歩15分

蔵の里

喜多方市はかつて「北方(きたかた)」と呼ばれ、江戸時代には物資の集散地として、また若松城下と米沢を結ぶ街道の町として栄えていた。蔵の里は喜多方市街地の西に位置し店蔵、蔵座敷、穀物蔵、味噌醸造蔵など7棟と、旧郷頭屋敷や旧肝煎屋敷の曲がり家を移築し、かつての町並みを再現している。

住所:〒966-0094 福島県喜多方市字押切2-109
交通・アクセス:喜多方駅より車で5分徒歩20分

喜多方蔵座敷美術館(笹屋旅館内)

開業が明治12年の旅籠。竹久夢二をはじめとし、この地を訪れ旅装を解いた数多くの画家は、即売用の絵を描くのを常とした。そのためこの旅館には多くの絵が残されており、平成2年4月27日、蔵座敷を美術館として開館した。

住所:〒966-0817 福島県喜多方市字三丁目4844
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩15分

若喜商店縞柿の蔵座敷

代々味噌醤油の醸造を行っている店で、喜多方最初のレンガ蔵(国登録有形文化財指定)が公開されている。庭側にバルコニー風の玄関がついていて、2階建ての蔵座敷の1階を縞柿(しまがき)の間と呼び、2階はすべてが欅造りの「欅(けやき)の間」(非公開)となっている。

住所:〒966-0817 福島県喜多方市字三丁目4786
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩10分

中の越後屋醤油店

昔ながらの家伝手法により蔵の中で長期熟成させた手造りの味噌・醤油を販売する店蔵。木造の店の奥へ一歩入ると座敷蔵をはじめ、味噌や醤油の醸造蔵など6つの蔵が並んでいる。座敷蔵は明治15年前後の完成とされる。

住所:〒966-0819 福島県喜多方市字一丁目4647
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩12分

甲斐本家蔵座敷

入口のスペースは甲斐家に代々伝わる日常用品や美術工芸品が展示されている。蔵座敷は大正6年に着工、完成まで7年余もの歳月を要し、外壁はすべて黒漆喰で塗りこめられ重厚な風格を漂わせている。座敷内部は東京深川の木場から取寄せた選りすぐりの銘木・節なしの檜・紫檀・黒檀などが使われている。

住所:〒966-0819 福島県喜多方市字一丁目4611番地
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩15分

清川商店

1631年(寛永8年)の創業で、喜多方では最も古い酒蔵になる。澄んだ空気と豊かな水に恵まれた会津地方でも古い造り酒屋のひとつで、品質第一の酒造りを続けてきた。全国的にも珍しい女性杜氏の酒造りが注目されている。酒蔵はいつでも見学できる。(無料)試飲も可。

住所:〒966-0818 福島県喜多方市字二丁目4659
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩15分

喜多の華酒造場

大正初期、喜多方で味噌醤油醸造業を営む星醸造より分家し、「星正宗」の銘柄で創業を開始した。戦争で一時廃業となったが、戦後喜多方の代表酒を目指す意味の「喜多の華」の銘柄で復活した。現在は地元喜多方の杜氏や蔵人達と、地酒米を安定供給している農業グループの連携で酒造りに取り組んでいる。

住所:〒966-0862 福島県喜多方市字前田4924
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩10分

大和川酒造店

寛政2年創業・旧越後街道の古い町並みが残る寺町で200年余の伝統と格式を守り、清冽な飯豊山系の伏流水と近隣地区の契約農家で生産された無農薬、減農薬無化学肥料の酒造好適米を全原料の70%に使用している。また最近では自社田で「山田錦」の栽培なども行っている。

住所:〒966-0861 福島県喜多方市字寺町4761
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩10分

蔵見世

喜多方の中心市街地ふれあい通りにあり、レトロな遊休蔵をモダンにリフォームしたこじゃれた複合店舗で、福島県建築文化賞を受賞している。1階は味噌田楽など飲食が楽しめ、2階は多目的座敷と刻字家高橋政巳氏のギャラリーになっている。

住所:〒966-0817 福島県喜多方市字三丁目4830
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩10分

金忠

江戸天保年間(1800年)、金沢より移住した学者が豆腐屋を開業し、「金沢屋忠蔵」と名乗った。のちに味噌醤油の醸造へと生業を変え、代々襲名の「忠蔵」を現在は六代目が受け継いでいる。常磐炭鉱全盛時には、炭鉱内に製造工場を持ち、県内一の生産量を誇っていた。現在、商品の販売は店売り、通販で行っている。

住所:〒966-0074福島県喜多方市字南町2854
交通・アクセス:喜多方駅より車で5分(徒歩30分)

小原酒造

280年前の享保2年(1717)創業で歴史ある酒蔵の一つ。「もろみ」の段階でクラシック音楽を聴かせ発酵させてつくった代表銘柄「蔵粋(くらしっく)」が、評判を呼んでいる。酒蔵は江戸末期の蔵座敷で、酒蔵の他に広い敷地内には味噌蔵、薬房蔵、お土産蔵などがある。

住所:〒966-0074 福島県喜多方市字南町2846
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩30分

南町蔵群

小田付の蔵並。南町から北町への通り沿いには、昔から酒造・麹屋・呉服屋・味噌醸造業者などが立ち並び、六斎市の開かれる所として近郷近在の人々が集散して賑わった地区である。現在も多くの蔵が良く残されていて、当時の賑わいを偲ぶことができる。

住所:〒966-0074 福島県喜多方市字南町
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩25分

会津うるし美術博物館

県内一といわれる、かつての大地主・風間善九郎邸の離れ屋敷にあって、漆塗師・田中亨氏の乾漆美術品が常設展示されている。また、伝統工芸師・芥川清鳳作の絢爛たる屏風、会津の遅い春を描いた「春」は金箔や螺鈿をふんだんに散りばめた豪奢な作品である。展示の案内・説明もしてくれる。

住所:〒966-0051 福島県喜多方市字東町4095
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩30分

あづまさ

元県内一の米穀商あづまさの蔵座敷を無料開放していて、お土産品の販売や食事処が入っている。懐かしい雰囲気の中で、会津木綿や桐下駄など会津の特産品をじっくり選ぶことができ、お食事処では本格手打ち蕎麦、喜多方ラーメン、田楽も楽しめる。別館ではお土産品などの販売をしている。

住所:〒966-0051 福島県喜多方市字東町4095
交通・アクセス:喜多方駅より徒歩25分

杉山の農家蔵群

杉山は、戸数19戸の小さな集落で、昔は木炭とスゲ草(笠の原料)の産地だった。集落を貫くように走る一本の小路をはさんで、生活や生産のための貯蔵蔵や、冠婚葬祭や賓客を迎える蔵座敷が立ち並ぶ様子が見られる。蔵座敷の内部は漆で塗り飾られ、趣向を凝らした窓や扉など当時の座敷としては最高のものだった。

住所:〒966-0001 福島県喜多方市岩月町入田付字上中
交通・アクセス:喜多方駅から9km 平沢方面行バス25分治里局前停留所下車

三津谷のレンガ蔵(若菜家)

三津谷に立ち並ぶレンガ蔵は若菜家所有の蔵である。敷地内まで見学可能な若菜氏宅では、農作業蔵、蔵座敷、味噌蔵等々、明治後期~昭和初期に建築された蔵を鑑賞できる。これらのレンガ蔵は若菜家所有の山の良質な赤土を、部落内に出来たレンガ工場に提供した縁により計画的に建造されたと言われている。

住所:〒966-0002 福島県喜多方市岩月町字宮津勝耕作3819
交通・アクセス:喜多方駅より平沢行三津谷下車